2008.09.16 09:30

ビッグメルセデスの洒落金男的こなし方
CLクラス、Sクラス その1

エモーションという言葉が
何度となく発せられた発表会

 「2台持ち」をテーマにした2回目は、メルセデス・ベンツSクラスとCLクラス。「王道」のコンビネーションである。

 Sクラスは過去数十年にもわたって、ラグジュアリー・サルーンの王座に君臨し続けてきた。

しかし、ここしばらくは迷走気味だったのも確かだ。1991年にデビューし巨艦的威容を誇ったW140型は、その過剰さが一部の「良識派」の反発を招いた。その反省から生まれた98年デビューのW220型は、角の取れた穏やかな姿から、今度は「Sクラスらしからぬ存在感の弱さ」を指摘された。そして2005年、現行のW221型に変ったわけだが、大型サルーンとしては意表をつくようなダイナミックで硬質なデザインは、これまでのSクラスにはないパーソナル感を強く滲ませている。

 この新型Sクラスの発表会は、「エモーション」という言葉がしばしば登場した。これはメルセデスの歴史においては過去に例のないことだ。

 従来のSクラスが、ステータスをアピールする最強のツールであったのは万人が認めるところだが、その一方で、エモーションに拘り、常にトレンドをチェックしているような人たちに対するアピールは弱かった。過去のSクラスのイメージを言葉に置き換えると、「お金持ち」「偉い人」「傲慢」「ダークスーツ」等々だったと思うが、新型Sクラスのイメージは大きく異なる。

 「ダークスーツ」はむろん馴染むし、「お金持ち」「偉い人」といった言葉も馴染む。しかし、「傲慢」な印象はあまりない。

 そんな現行Sクラスに、私はパーソナルカーとしての資質を強く感じている。例えば、タイトめのブルージーンズと上等な白のコットンシャツが似合うような男なら、プライベートシーンでも難なく使いこなせるだろう。
 ちょっとワルっぽくタイを緩めた姿が似合うような男もいい。

 具体的な人物を挙げるなら、英国プレミアリーグの強豪、チェルシーFCを率いるホセ・モウリーニョ監督(アルマーニを着こなすポルトガル出身の監督)だが、彼のワードローブは、たぶん、大半がモノトーン系とブルー系で占められていると私は想像する。お洒落度、ちょいワル度も含めて、私の中では最高にカッコいい男の一人である。

 モウリーニョ監督がどんなクルマに乗っているかは知らないが、このところ、トレンドの先端を走り始めた感のある「輝度の高いシルバー」のSクラスにでも乗っていたりしたら、完璧に「決まり!」だ。
 Sクラスのボディカラーは「黒」のイメージは強いと思うが、後席に座るのならもちろん黒はいい。しかし、ビジネスに使うにしても、自らステアリングを握るのであれば、黒は勧められない。いくらパーソナル度がいくら高まっているとはいえ、黒のSクラスでは、あまりに公用車のイメージが強すぎる。

 私のいちばんのお勧めは、前記した「輝度の高いシルバー」だが、その場合、インテリアは黒で締めておくのが条件だ。

 モウリーニョ監督じゃないが、アルマーニのスーツなんかを着てSクラスのステアリングを握る、ブルーのシャツに着けたグレーのタイを無造作に緩めてSクラスを駆る……そうとうかっこいいと思う。
 Sクラスには日本向けには7モデルが設定されているが、私がベストバランスと考えるのはS550。正確でしなやかで懐の深い身のこなしは絶品だし、滑らかでしっかりした乗り味も絶品。もし、長距離もよく走るようなら、雨にも雪にも風にも強く、オールマイティなS550・4MATICがお勧めだ。

 エモーショナルでパーソナルなイメージを得た新型Sクラスは、もちろん、ビジネスシーンで強い輝きを放ち、強いオーラを放つクルマであり続けている。
 さらにいえば、依然「男のクルマ」というイメージが強い。

 だから、もし女性のパートーナーも運転する機会が多いのであれば、注文書にサインする前に、彼女の運転する姿を、外からじっくり眺めてみるといい。
 もし、彼女が、メリル・ストリープ演じる自信に満ちたキャリアウーマンのような女性だったとしたら、Sクラスにも負けることはきっとないだろう。

 いずれにせよ、以前はメルセデスの大型セダンをお洒落に乗りこなそうなんて、想像もできなかった。しかし新型Sクラスは、そんなシーンをいくらでも思い浮かべることができるクルマなのである。
 


(『zino』2007年6月号掲載記事)