「光と影」の織りなすコントラストが
クーペの美意識を磨く アウディ A5 その1
深とした静けさと凛としたダイナミズム
アウディA5はクールであり、美しい。どこから見ても、一部の隙もない美意識に貫かれている。
シングルフレームグリルとデイタイムランニングライトが組み込まれたフロントのインパクトは強烈で、ひとつ間違えると下品で過剰な代物になりかねない。

しかし、そんなリスクも鮮やかにクリア。新しい時代の感性とともに、インテリジェンスすら感じさせられる貌に仕立て上げられているのも、アウディならではの美意識のなせるワザだろう。
「10スポーク・Vスタイリング」と名付けられたアルミホイールも美しい。私はこのホイールを見るとなぜか、ドキドキするような気分になる。宝飾品のように魅惑的なこのホイールは、多くの人たちの美への感受性を刺激するはずだ。
とにかく、停まっていても走っていても、アウディ・A5は美しい。低くクリーンなサイドシルエットは、一見して平凡に見えるかもしれないが、硬質な線と面によって描き出される「光と影」には、深とした静けさと凜としたダイナミズムがある。「光と影」といえば、一度、イタリアの光の中でA5を見てみたい。というのも、アウディのデザイン要素には、いつも「イタリア」というキーワードが入っているからだ。それはイタリアがもつ、歴史に根ざした奥深い文化に敬意を表すものであり、その文化の下に生まれ育った人たちの審美眼に敬意を表すものだと私は考えている。
特に、欧州ではもっとも経済的に豊かな北イタリアの中心都市であり、世界を牽引するファッションの街ミラノを、アウディは常に強く意識している。
アウディにとって、ミラノは決定的に重要な街なのである。
美しいミラノの街に映えるアウディ、美意識が強く、トレンドに敏感なミラノの人たちに支持されるクルマ……そんなアウディは世界のプレミアム市場でも支持されると確信しているはずだ。
アウディ・デザインを率い(現在はVWグループのデザイン責任者)A5のデザインを統括した、世界でももっとも著名なデザイナーのひとりであるヴァルター・デ・シルバも、「イタリアンスタイルとドイツの完成度の高さの融合は、特別な何かをもたらす」と語っているが、この言葉に私は無条件に同意する。そして、A5は、デ・シルバのそんな言葉を形にしたものだと思っている。残念ながら、ミラノでA5を見る機会はまだ持てていないが、近々、必ず見たいと思っている。
できれば、北イタリアの光がいちばん美しい5月頃、それももっともドラマチックな光りと影が見られる夕暮れ時に……。
(『zino』2008年5月号掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。




