「光と影」の織りなすコントラストが
クーペの美意識を磨く アウディ A5 その3
A5の上質さはミラノの老舗の製品と
重なるものを感じる
翌日はコモ湖までのショートトリップを楽しみたい。
1時間ほどで着くから、朝はゆっくり出掛ければいい。

ハイウェイと狭く曲がりくねった道路のコンビネーションは、アウディA5の心地よさをタップリ味わわせてくれるはずだ。
3.2FSIクアトロのしなやかでしっかりしたフットワークは、どんな道でも心地よいドライブを約束してくれるが、とくに、イタリアのような、アップテンポでメリハリあるドライビングを求められるような条件下では真価を発揮するだろう。
V6・3.2lエンジンのレスポンスの良さと有機的静粛さも、心地よいドライブを約束してくれる要素になる。
コモ湖は、古代ローマ時代からリゾート地として知られ、かつての貴族たちの栄華が今に伝わるが、そんな中に身を置いても、アウディ・A5の輝きと存在感が削がれることはないだろう。
ランチはバルコニーにテーブルのある湖畔のレストランを選びたい。パーク・ハイアットのコンシェルジェにその旨を伝え、予約を取ってもらえば間違いはない。
再び1時間ほどのA5のドライブを楽しみ、ミラノへ戻る。
その後は街の散策とショッピングといったことになろうが、実は、25年ほど前、初めてミラノに行ったときに買い、未だ愛用し続けているものがある。ヴァレクストラの鞄とタニノ・クリスチーのブーツだ。
ともにシンプルで美しく、今でも旧さを感じさせないし、革と金具が上質であるのはもちろんのこと、造りがいいので型崩れもしない。
当時の日本ではまったく知られていないブランドで、ミラノの人に勧められたのだが、買ったのはもちろん、私自身が気に入ったからだ。
なぜこんな話を引き出したのかというと、A5の美しさと上質さに、ミラノの老舗の製品と重なり合うものを感じるからだ。
もちろん、靴や鞄とクルマを同じ価値観や時間軸で見ることはできないが、A5の魅力の基本を構成する要素が、美意識の高さと完成度の高さにあるなら、間違いなく両者には重なり合うものがある。A5が追い求めた美、そして、「光と影」のドラマは、きっと、しかるべき人たちの間で長きに亘って愛され、語り続けられることになるだろう。
(『zino』2008年5月号掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。




