「2台目」で輝くボルボ その1
今の時代静かなるキャラもまた強し!
2ヵ月ほど前になるが、ミラノで時を過ごす機会があった。まだ4月だというのに、連日27〜28度という暑さにはちょっと参った。
暖かい陽射しと、ちょっと肌寒い微風が入り混じったような心地よさを期待していた私としては、見事に裏切られたことになる。が、だからといって、大好きなミラノにいて、ホテルに閉じこもっているなんてできっこない。むろん街を歩いた。
季節外れの暑さのせいか、それも湿り気の強い暑さのせいか……いや、絶対にそうだと思うが、いつもは颯爽と伸びているミラノの男たち女たちの背筋も、心なしか弛んでいるような気がした。
そんなことを感じつつ街を歩いていて、ふと気付いたことがある。
ボルボS80がけっこう多いということだ。むろん、新しいS80だが、とくに濃い目のチタン系のボディカラーがミラノの街の雰囲気によく溶け込んでいた。ウィークデイだから当然かもしれないが、ステアリングを握っているのはビジネスマンと思える人がほとんど。インテリ風で清潔感があり、控えめだがトレンドを押さえたタイとシャツを着けている……そんな印象も共通していた。
「とてもいい感じだ」と思った。
ミラノのお洒落な人たち……といえば、まずはアウディかBMWとのコンビネーションを思い浮かべるが、そこにボルボS80が加わった感のある今回の体験に、私はかなり強いインパクトを受けた。
ボルボというブランドには「お金持ち」とか「セレブ」といった印象に直接結びつくようなイメージはない。それは新しいS80にも当てはまる。しかし、控えめで、嫌味なく、さらには、見る人に心地よいインテリジェンスをも感じさせる……そんな「独特のプレミアム感」には磨きがかかってきた感がある。
このところ、キャラの際立ったクルマが目立つ流れの中で、ボルボのキャラが希薄になりはじめているように私は感じていたのだが、今回のミラノの体験で、認識を修正しなければならないと思った。
ミラノで見たS80とそのオーナーたちのコラボレーションに、いうならば「静かなるキャラもまた強し」といった印象を受けたのである。
アウディやBMWがキャラを尖鋭化させてゆく中で、ボルボはそこに空いた隙間を巧みに埋める存在になりつつあるように思える。
そしてこうした印象は、S80だけでなく、フルモデルチェンジされたC70にも、新たにラインナップに加わったC30にも当てはまる。
新型C70はリトラクタブルハードトップの4シーター・オープン。オープンモデルは機能優先ではなく、エモーション優先のクルマだから、ルックスがよくなければならない。オープンのときも、クローズドのときも、だ。

ボルボC70はそんな条件を十分満たしているモデルだ。トップを下げたときは、4シーター・オープンならではのエレガントさを表してくれるし、トップを上げたときのクーペ的プロポーションもいい。
このクーペ的プロポーションからは後席のタイトさを想像してしまうかもしれないが、身長平均170cm程度であれば4人は楽に乗れる。
トップを下げれば華やかな、トップを上げれば控えめなシーンを演じるC70……むろん職種にもよるが、クローズドにしたC70なら、ビジネスシーンにもさして違和感なく馴染みそうな気がする。
C70は「1台で多くを満たしてくれるクルマ」だが、2ドアを苦にせず、2ドアならではのスタイリッシュさを歓迎するような人なら、さらには、多彩で、アクティブで、洗練されたライフスタイルを求めるような人なら、男女を問わず魅力的な選択肢になりうるだろう。
C70は大人にしか似会わないといった印象を持つ人もいるかもしれないが、それもない。若い人にも似合うという実例を私は見ている。
ハワイでの発表会の時のことだ。
ビーチのディナー会場に真っ赤なC70が置いてあり、オープンにした後席には真っ赤なサーフボードが突き刺すように積まれていた。
陽が落ちかけたビーチで見たそんなC70の姿は、とても若々しく、とても刺激的だった。
「逞しく日焼けしたサーファーとオープンにしたC70のコラボって、すごくいいだろうな」。
「アバクロ(アバクロンビー&フィッチ)のロゴTとクラシックショーツなんかで、ボードを積んだC70を転がしたら決まりだな」。
「C70でオアフのサンセットビーチに行ってみたい」。
「でも、真新しいピカピカのC70じゃあ、サンセットビーチの気分じゃないかもしれない」……いろいろなイメージが、想いが、次から次へと浮かんできた。楽しかった。
アウトドア志向がある人ならXC90とV70の2台持ちもいい。特にライトなアウトドア志向の人にはいいコンビネーションだ。
むろん、2台とも街にもよく馴染む。とくに洗練されたアップタウンの空気感にはよく馴染む。
とにかく、ボルボの真骨頂である「控えめと洗練」はC70にもしっかりインプットされている。だから懐が深いクルマになっているのだ。
(『zino』2007年8月号掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。




