2008.09.16 09:30

岡崎宏司の考察と結論
ポルシェ911 その1

サイズ感はもとより、後輪でグンと蹴り出す
トラクション感覚がいい

 ポルシェと私が初めて密な付き合いをしたのは1963年。356の最終モデルである1600SCを兄が買ったときだ。当時の356の電気系統は6Vだったが、兄はOPの12Vを注文し、サンルーフも注文した。ほぼ同時期に、兄の親友がカレラ2000GS(カレラ2とも呼ばれる)を買ったが、私にもよくステアリングを握らせてくれた。
 

  当時の私の愛車はMGB。刺激的で高質なポルシェの走りは、同じライトウェイトスポーツながらMGBとは別次元のものだった。

 その後、確か70年前後に、やはり兄が911Sを買ったが、私自身がポルシェを持ったのは87年。930SCが初めてだ。

 そして90年に964を買い、今は二世帯住宅に住む息子が白の997に乗っている。 現在の私の愛車は濃紺のボディにグレーのソフトトップ、そして明るいベージュのトリムを組み合わせたZ4だが、もう1台、ユーティリティに優れたボルボ・V50が、家族の日々の雑事をこなしてくれている。

 わが家の場合、「家族のクルマは誰が乗ってもいい」ことになっている。だから、家内も娘(息子の嫁)も、行く先によって、あるいはそのときの気分で、997にも乗るしZ4にも乗る。家内や娘が997やZ4を運転している姿を見るのが、私はとても好きだ。

 そんなことで、ポルシェとはけっこう縁のある私だが、買い換えのときも、ポルシェが候補の1台に挙がる頻度は高い。

 今も次期FXとして、911タルガとカブリオレが、さらには最新の「christophorus」(ポルシェのPR誌)に出ている、明るいブルーメタリックのケイマンS(軽快な白のコットンジャケットとパンツがお似合いの女性とのコラボレーションも気に入った)が胸の内を駆け巡っている。

 初めてポルシェに触れてからほぼ44年、モータージャナリストとしても多くの接触を重ねてきているが、そんな私が、ポルシェ、とくに911を一言で括るとすれば、「スポーツカー好きのための最高の実用車」、あるいは「1台で多くの望みを叶えてくれるスポーツカー」といったことになるだろうか。

 911最大の魅力は「ポルシェ」という絶対的ステータスをもつブランドだが、他に較べるもののない「911ルック」という超個性的ルックスにもまた同じことが言える。

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 911のキャビンは、スポーツカーとしてのタイト感とGTとしてのゆとりのバランスが絶妙だし、プラス2の後席は、コートやバッグだけでなく、花束やプレゼントの箱をさり気なく置くスペースとしてもいい感じだ。

 911の基本モデルにはRRのカレラと4WDのカレラ4があるが、両車の外観上のいちばんの違いはリアフェンダー。カレラ4のリアフェンダーはカレラより左右22mmずつ拡大され、全巾は44mm広い。

 リアフェンダーの拡大は過去もずっと行われてきたことだが、997型のそれは、996型までのものとは印象が異なる。標準ボディとの差異をハッキリ見せ付けはするが、同時に、品位を保ち、不必要な威嚇性を感じさせないという嬉しい特徴をもっている。

 リアに305/30ZR19サイズのタイヤを履き、10mm車高が低く、大径のブレーキに赤いキャリパーが組み込まれたカレラ4Sでもそうした印象に変わりはない。だから、落ち着いた無彩色系のボディカラーでも選べば、ビジネスシーンにさえ馴染むケースは少なくないはずだ。実際、ミラノやパリ、ミュンヘンやLAなどでは、仕立てのいいダークスーツに鮮やかなブルーのタイ……そんな装いのビジネスマンらしき紳士がステアリングを握るカレラ4Sによく出会う。

 高性能化とともにラグジュアリー化も進む911は、今や有能でアクティブでお洒落なビジネスマンの身の回りを固める、魅力的なツールとしての地位をも高めている。

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 そんな男たちに、もし「911に乗る理由は?」と聞いたとき、「サイズ感もいいし、なにより後輪でグンと蹴り出すトラクション感覚が好きだから」と、911の魅力の本質部分をサラリと言ってのけられたら、カッコよさはより際立つことになる。

 ちなみに、ドイツのTUV=技術検査協会の2005年版報告書によると、911はここ2年連続して、車齢8〜9年と10〜11年で、「もっとも故障率の少ないクルマ」1位の座を獲得している。911は表層的部分だけでなく、耐久性/信頼性といった内に秘めた部分でもまた「優れたクルマ」であり、「多くを叶えてくれるクルマ」なのだ。

 ただし、911は乗り味/走り味とタイヤコンディションとの関係がかなり蜜であるため、911を常に快適に走らせたい人は、タイヤの予算は十分に用意しておきたい。

 

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(『@ZINO』2007年掲載記事)