ミュンヘンで出会ったクールな存在感
BMW 550i Touring その2
アウトドア的感覚が排除された佇まい
1台は黒、1台は濃いグレー、1台は濃紺だったが、それぞれがとてもいい雰囲気を漂わせていた。
5シリーズ・ツーリングは前から気になっていた。もちろん、現行モデルのことである。

1台は黒、1台は濃いグレー、1台は濃紺だったが、それぞれがとてもいい雰囲気を漂わせていた。
5シリーズ・ツーリングは前から気になっていた。もちろん、現行モデルのことである。
フランクフルトやミュンヘンはもとより、パリやミラノのトレンディなエリアでも、デビュー直後から5シリーズ・ツーリングの姿はかなり目立っていたからである。
それも単に台数的に目立つといったことではなく、強い存在感を漂わせていたのだ。いや、強い存在感というより「クールな存在感」と言った方がより表現は正しいだろう。
ステーションワゴンといえば、基本機能は多用途性にあるので、本来はファミリー的、あるいはアウトドア的雰囲気がどこかに感じられても不思議はないが、5シリーズ・ツーリングにはそれがない。「まったくない!」のだ。
ラゲッジコンパートメントは広いスペースと優れた使い勝手を備えているし、ステーションワゴンとしての機能レベルは高い。週末はタップリ荷物を積み、家族揃ってキャンプ……機能的にはそんな使い方に難なく対応できるし、そうした使い方をしている人もむろんいるだろう。でも、キャンプという単語が5シリーズ・ツーリングに馴染むかと問われれば、私の答えは完全に「NO!」だ。私が抱く5シリーズ・ツーリングのイメージには、ファミリーとかアウトドアとか……とにかく暖かさや土の臭いといった類のものは一切ない。
私は「クール」とう言葉が好きだが、5シリーズ・ツーリングにはこの言葉が素晴らしくよく馴染む。
鋭いエッジと彫刻的な面で形作られたなんとも個性的な5シリーズのデザインも、4ドア・サルーンよりむしろ、ツーリングの方が強い輝きを放っているように思える。
私が抱く5シリーズ・ツーリングのイメージの背景には都会とハイウェイしかない。それもトレンディでクールな人たちが住む都会であり、トラックの少ない整備されたハイウェイである。そして実際にも、5シリーズ・ツーリングの姿を多く見かけるのは、そんな条件を満たしているところが多い。
ヨーロッパのトレンディなエリアで出会う5シリーズ・ツーリングのボディカラーは、黒、濃いグレー、濃紺の3種でほぼ9割を占める。
プレミアムセグメントにおける、黒を中心にした無彩色系ボディカラーの人気はいつになったら弱まるのか……ちょっと予測がつけ難い状況になってきたが、上記のマキシミリアン通りに駐まっていた3台のツーリングも、まさに定番カラーを纏っていたということである。
また、3台ともきれいに磨き込まれていたが、これもトレンディなエリアで見かける5シリーズ・ツーリングの共通項といえるものだ。
今にも雪に変わりそうな重苦しい小雨模様の空の下でも、磨き込まれた3台の輝きは異彩を放っていた。
シャープで彫刻的なデザインが磨き甲斐のあるものだということは、オーナなら当然わかっているとは思うが、それにしても、その徹底ぶりには目を奪われた。
(『zino』2008年4月号掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。




