岡崎宏司の考察と結論
VW ゴルフ その3
VWブランドに何か特別な存在感を感じさせられる
ところで、最近のVWのいちばんのトピックは? といえば「TSI」だ。
小排気量エンジンと過給器の組み合わせは珍しくはないが、ゴルフGT・TSIの実力には、圧倒されたし、驚ろかされた。

1.4l・4気筒のFSI(ガソリン直噴式)エンジンに、低速側を受け持つスーパーチャージャーと、高速側を受け持つターボチャージャーを組み合わせ、2.5lクラス自然吸気式エンジン並みの170ps/240Nmを引き出すが、高度にプログラミングされたDSGとの組み合わせは、思わず「ほんとに!?」と思うほどのスピードと快適な走り味を実現している。
ゴルフGT・TSIの走り味は、小排気量車ではかつて味わったことのない上質で心地よいものだ。単に速いといったことだけではなく、上等なストレート6を積んだ高級車のように滑らかに静かにも走るのだ。
TSIエンジンとDSGの調和もほとんど完璧で、速くて上質な走りだけでなく、燃費面でも大きな成果を引き出している。コンパクトで、軽量で、高出力で、効率がよく、低燃費で、コスト的にも小型量販車に対応できる……そんな「TSI+DSG」を、私は「ニュージェネレーションズ・インテリジェント・パワートレイン」と呼びたい。
1.4TSIには170ps/140psの2仕様があり、GTには170ps仕様、トゥーランには170/140psの両仕様が積まれるが、この魔法使いのようなパワートレインは、今後ゴルフファミリーの多くに積まれる予定であり、ゴルフの魅力と競争力をさらに押し上げることになるはずだ。
VWには「まっとうな人が乗るクルマ」といったイメージがある。でも、それは平凡で退屈なことを意味しているのではない。
ゴルフを代表するGTIのスピードと奥行きの深い身のこなしは、コンパクトスポーツの見本といえるものだし、TSIは小型車に新次元のパフォーマンスをもたらしている。
GTIはきっとブラッド・ピッドにだってフィットするはずだし、トゥアレグには濃紺のピンストライプ・スーツを粋に着こなす男がよく馴染むはずだ。
「VWは質感/本物感をとても大切にしている」とは技術担当役員の言葉だが頷ける。
もちろん、車種やモデルによって多少のバラツキはあるが、ポロからトゥアレグにいたるまで、外観品質、基本骨格、走り味、乗り味……いずれも質感/本物感は高い。
これもまた、小型ファミリーカーを柱にしたメーカーでありながら、VWブランドに何か特別な存在感を感じさせられる、大きな理由のひとつになっているはずだ。
(『@ZINO』2007年掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。




